長期投資なら安全というのは、勘違い? 実は時間を長くすればするほどリスクは大きくなっている。

長期投資なら安全と言われる根拠?

「資産運用は、長期投資で取り組めばリスクは小さくなる」という話をよく聞くようになった。

長期投資なら資産運用は安全だと言われるワケとしては、投資期間が長期になるほど損をしている確率が下がるというデータを根拠に話していることが多いと思われます。

例えば、具体的には以下のようなグラフを見せてその傾向を説明したりしています。

(金融庁:教えて虫とり先生(第3回))

このグラフの左側からは、投資期間が短期間だと損している可能性が高く、損益率もばらばらに広がっている傾向が見受けられます。

しかし、右側のグラフを見ると、20年間の長期投資をすることで、損をしている人がいなくなり、損益率も一部に集まってくる傾向がみられるというわけです。


これを見ながら説明をされると、長期投資なら安全と思ってしまうのもわかります。

特に何と言っても、20年間投資を続けさえすれば損している人はいなくなる、ということを示しているのですから、長期投資なら安全だと思ってしまうことでしょう。

ただし、このグラフの根拠は、国内外の株式と債券に分散投資をし、尚且つ積立投資をしているというものですので、それ以外の投資でも同じことになるとは考えない方がいいでしょう。

たとえば、国内外の株式と債券に分散投資をする以外の投資をしている投資信託などを、このグラフを持ち出して長期投資の有効性を説明し、投資を勧めるといったことは、論外だと思った方がいいと思っています。


長期投資は本当にリスクは小さい?

以上のようなグラフと説明をされると、短期投資は危険で、長期投資は安全だと思ってしまうものです。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

実は、長期投資は短期投資よりもリスクが大きいという事を言う人もいます。


そもそもリスクとは何のことを指すのか?

経済学や金融工学では、リスクのことを資産価格の値動きであるボラティリティだと考えらえています。

つまり、大きく値動きするものはリスクが大きく、小さな値動きしかしないものは、リスクが小さいと言われています。

株式投資がリスクが大きいというのは、株式という資産の”どういう価格付けなのかわからないもの”という不確かという意味ではなく、株式資産の値動きの大きさをリスクと言っているわけです。

逆に日本国債や現預金のように、値動きが小さい、または値動きがない資産は、リスクが小さいと言われています。


では、短期投資と長期投資ではどちらの方が値動きが大きいのでしょうか?

もしかすると、ピンとくる人もいるかもしれませんが、実は、値動きという視点から見ると、長期投資の方が短期投資よりも大きく動いていることがわかります。

1日という短期間で区切れば、国内の株式市場の目安である日経平均株価は、しょせん数%程度の値動きしかしていません。(過去には、ブラックフマンデーようなこともありましたが)

100万円投資して、1日だけに絞れば、損をしても数万円程度の損失で収まるという事です。

対して、長期投資になると、同じ日経平均でも数%しか値動きがないという事はありません。

1年で区切れば、平常時でも10%以上は上下に値動きしているものです。

リスクが値動きの大きさを意味するなら、短期投資よりも長期投資はリスクが大きい、というのが正解というわけです。


長期投資は、リスクが大きいということをわかっていないと、投資は続かなくなるかも。

安全だと言われても、値動きは全然安全じゃない。

長期投資は安全どころか、実はリスクが大きい投資法なのです。

そのリスクの大きさから、時には大きな損失となるケースがあることを理解してないと、投資が続けられなくなことだってあります。


例えば、もし積立投資をして、かれこれ10年。

もう既に1,000万円ぐらいの資金を運用していたとします。

この10年の間に相場が大きく荒れることもなく、月7~8万円ぐらいの積立投資をしてれば、全然不思議な金額じゃありません。

このままいけば、老後の資金も安泰だなんて、安心もしていた。

しかし、この10年を過ぎたあたりで、突然相場に異変が起きる。過去の事例でいれば、2000年代初期のITバブル、2008年頃のリーマンショック、そういう異変は長い目で見ると意外と頻繁に起きている。

こういう相場の異変では、高値から約半分になってしまうなんてことはよくある。

それまで、1,000万円あった資産も、半分になって500万円ぐらいになってしまうかもしれない。


長期投資というのは、投資をしたら売らない、引き出さない、というのが基本戦略になっている。

相場の異変に対し、なんの対策もせず、ただまともに損失を受けるだけになる。

コツコツと10年以上かけて貯めた資産の半分が、失われていくことになるのをただ見ているだけになる。

この時、自分はどう感じるのだろうか?

なんの心の準備もせずに、この損失を受け入れられるのだろうか?


長期投資はリスクが大きい。

でも、リスクが大きいからこそ、長期投資には大きくリターンを伸ばすポテンシャルも持っている。

ハイリスクハイリターンという言葉は、長期投資にも当てはまる。

長期投資に対し、最初から「安全」とか「リスクが小さい」というところから入っていくことには、正直危険性が大きいのではないかと考えています。

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