インフレだと株価は上がる?
株式投資のアドバイスの中に、「インフレの時は株式に投資するのが良い」という話を目にすることがあります。
その理由は、インフレになると現金や預金といった資産は価値が減少することになるけれど、株式は企業が値上げなどでインフレに対応することができるから、株価はインフレと一緒に上がるようになっているといった話です。
確かに、インフレとは物価が上昇することと言われるけれど、視点を変えれば、物価が上昇しているのではなく、通貨の購買力が減少している現象ともいえますから、インフレになると現金や預金などの通貨に近い資産の場合には、直接的に価値が減少しているという事ができるでしょう。
しかし、インフレと株価の関係に、インフレと通貨のような直接的な因果関係はあるのだろうか?
インフレになると株価が上がるというのを、まるで直接的な因果関係があるかのように話すのは、ちょっと短絡的すぎるのではないだろうか?
株価というのは、そもそも複雑系。
株式投資の話をする時に、「○○だから、株価は上がる。」とか、逆に「○○が起こると、株価は下がる。」などといった、株価と何かを直接結びつけて、株価の予想をする話をよく見かけます。
株式評論家や経済評論家、投資アドバイザー、投資アナリスト、などなど。
しかし、これらの話は、そもそもがおかしい。
株価と言うのは、単純に何かとつながっているものではなく、複雑系でできていると考えています。
つまり、一つの事象ではなく、いろんな事象がつながりあって株価というのは動いている。
経済はもちろん、地政学的なものも絡んでくる。他にも、相場の心理的なものの影響もかなり大きいと感じている。もしくは、ただ単純に行き過ぎていた、ということだってある。
また、今日までは経済的な話題に株価が強く反応していたけど、明日は政治家の発言に強く反応するなんてこともあり、株価を左右する中心的な話題というのは日によってコロコロと変わることがある。
何に反応して株価が動いているのかなんて、わかるようでわかるものではない。
一言で表すなら、「相場は、相場が動きたいように動いている。」です。
株価の予想をしている人は、予想をすることが仕事で、当てることではないと思っています。
もし当てることができるなら、ただの予想屋ではなく、ファンドマネージャーにでもなった方が稼げるような気がします。
インフレになると株価が上がるというのはなぜ?
ここまでの話で言う通り、株価とたった一つの経済事象が、そのまま直でつながっているなんてことはそもそもありません。
株価と言うのは、短期的には投機的な動きをするというのは有名な話です。投機的ですから、その値動きに理由なんて大してないという事です。
じゃあなぜインフレになると株価が上がると説明されているのだろうか?
ジェレミー・シーゲルなどの有名が学者たちが過去の経済環境を調べてみると、インフレ以上に価値が上がっていたのは株式ぐらいだった、という話があります。
過去の推移をみると、債券ではインフレに負ける。当然預貯金はだめ、金などの現物資産もインフレと同程度でしかない。インフレを上回ったのは株式ぐらいしかなかった、ということのようです。
おそらくそのような話から、「インフレになった株を買え」という話に因果関係を繋げてしまっているのかもしれないと思っています。
個人的には、インフレになるから株価が上がるのではなく、インフレ以上に価値を保全できたのが株式だったという結果論なのではないかと考えているわけです。
つまりは、たとえインフレが来たとしても、そのインフレによって株価が上がるわけではない。「インフレ=株を買え」という理屈は、直接的にはつながっていないのではないかと考えています。
株式を買う時というのは、直接株式(企業)を見て判断した方がいいと思っている。
株価と言うのは、短期的には投票機だが、長期的には計量器という有名ないわれもある。
企業の価値を測るのが株価の役目なら、株価は長期的には企業の価値を表すことになると思われる。インフレがどうとかいうのは、副次的な意味しかないと考えています。
つまりは、「インフレだから株を買え」というのは、ちょっと短絡的過ぎるのではないかと思っています。
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