投資のシミュレーションは役立たず
資産運用に関するアドバイスで、「年利〇%で運用すると、何年後には何百万円の貯蓄ができます。」なんて話をしているのをよく目にする。
そして、そのような説明を受けて、出された数字を期待して、投資信託の積立などを始める人も少なくない。
でも、はっきり言ってそういうのは、大して参考にはなりません。
投資の利回りと言うのは、過去のパフォーマンスを調べるための数字であって、未来を予測するための数字じゃありません。
たとえば「株式投資の利回りはだいたい〇%だから、どうのこうの」といった説明をしている人は、どうもそのことを理解していないように感じる。
「自分なりの戦略を持って今まで投資をしてきた結果、複利にすると年〇%で運用できた。」というのが、投資の利回り。
投資を理解している人は、仮に自分が、今まで〇%で運用することができたと言っても、今後も同じ〇%のリターンが確保できる、なんてことは考えていない。
『自分が今までやってきたこと』や『自分が投資に対して持っている考え方』、そういうものが間違っていなかったかどうかを確認する、それが年〇%という数字の役目です。
その〇%のリターンに満足できるのなら、今後もその方針で運用をしていこうと考える。その時に、今後のリターンの数字についてはあまり予測をしない。
投資の利回りの数字というのは、そういうもの、そしてそれ以上の意味はない。
投資はリスクを取ることだということが原理原則。
「株式投資の利回りは、今まで年間約7%で来た。だから今後も年7%のリターンを生み出す可能性が高い。」といった説明を良く聞く。
でも、よく考えたらその話はちょっとおかしい。
確かに株式投資の過去の利回りを計算すると、年7%ぐらいになるらしい。でもだからといって今後も7%のリターンを望めるという話になったら、株式投資のリスクは一体どこに行ってしまうのでしょうか?
いくら大きな値動きがあるとは言っても、かなり高い確率で年7%ものリターンが望めるとなれば、そこにリスクがあると言えるのだろうか?
そのような話を聞いたとき「高い確率で年7%のリターンがあるなら、値動きなんて無視して買う」という結論にはならないだろうか。その場合、その人は本当に株式投資のリスクを考えていると言えるのだろうか?
高い確率で儲かるということであれば、途中経過はどうであれ、そこにリスクを感じる人はあまりいないことと思います。
リスクを感じないで買われる資産が、リスク資産とよばれるのはおかしな話です。
そこでも、「年利〇%で長期間投資をすれば、10年後には〇百万円になる」という変なシミュレーションを信じることの矛盾があります。
株式投資に限らず、投資とはリスクを取ることです。
そして、そのリスクとは、『不確実性』を意味します。
変な経済学などによって、リスクを『価格の変動率〇%』という表現をしたせいで、本当の意味のリスクをはき違えている人が多くなっていると感じています。
リスク資産の持つリスクを数字にしたことの効果は大きかった。
リスクと言う数字をあれこれやって作り上げることで、それとなく説得力のある説明ができるようになった。ポートフォリオ理論なんていうリターンを維持しながらリスクを最小限になんていう夢物語まで誕生した。
リスクをリスクと思わせない、なるほどと思わせる説明の材料ができた。
でも、この数字によるリスクの考え方は、すでに破たんしている。少なくとも今の数字によるリスクの考え方は、LTCM(ノーベル賞を受賞した経済学者などが集まって創設されたヘッジファンド)が破綻したときに、すでに危険だとわかっているはず。
リスクとは不確実性を意味する。つまりは、「『わからない』ということしかわかっていない」という事です。
当然、投資のシミュレーションでよく見るような、年利〇%なんて数字もわかっていない。
そもそも分かっていないものを、リスクと言うからです。
そもそも、投資のリスクは計算できない。
FP(ファイナンシャルプランナー)や金融機関といったファイナンシャルアドバイザーたちが説明している投資の話の中には、あたかもリスクを計算できるもののように取り扱っていることがある。
「この投資信託の期待利回りは、年利〇%」とか、「投資信託の年間騰落率は〇%」だとか、「長期投資で複利で運用すれば、〇倍になる」とか、あたかも未来のことが分かった風に話をする。
しかし、何度も言うが、リスクとは『不確実性』、わからないという事。
そもそも、経済の事象を数字で計算すること、今の時代ではまだできていません。
経済学者や評論家の話では、経済を数字で考え、数字で説明し、当然のように計算で答えが導き出せると思っている人もいるようです。
しかし、経済の現場と言うのは、ボールの投擲や分子の動きのように、理論通りに動くようなものとは違います。
なぜならそこには、ボールや分子にはない、人ならではの『感情』というものが絡んでくるからです。
そして、感情が入ると途端に計算することが難しくなる。
だから、すくなくとも今の時代では、まだ株式市場などの金融マーケットを計算することはできていないと考えています。
当然、株式投資など投資のことを、リスクが〇%だとか将来のリターンが〇%だといった数字で示されるものは、あまり当てにならないと思っている。
天才ともいわれた量子力学などで活躍した物理学者ファインマンは、「電子に感情があったら、物理学がどれだけ難しくなるか想像してみて欲しい。」といったそうです。
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